「仮頭・仮面の祭り」研究の認識論的枠組みに関する問題提起(序説)―事例調査報告:シルヴェスタークロイゼの祭り―

Résumé : 祝祭において仮頭・仮面 を纏うことは、古代日本や現代チベット仏教圏、インドあるいはヨーロッパの民俗文化圏に広く共通して認められる風習である。しかしながら、それぞれの祝祭における仮頭・仮面の着用の起源についてはいまだ明確に断定されないものが多く、それぞれの仮頭・仮面に固有の、着用の意図についても諸説紛々として限定されるにいたっていない。民俗学者ジャン=ルイ・ベドゥアンによれば、仮面を着用するさまざま行為に共通する点は、「形体を変えるばかりでなく、本質までも変えてしまいたい、という[人間の]欲望が[そこに]存在」(1963:p. 20)することであり、仮面はその欲望を実現するための「変貌の道具」(ibid.:p. 12、p. 19)である。ベドゥアンはさらに、特に死者がつける仮面について、それは「生者の視線や情念から遠くはなれたよみ,死者のくに,国において成就される、目に見えぬ変貌の代理者」(ibid.:p. 13)であり、この死者の仮面も加えて、一般的に仮面とは、「生と死、見えるものと見えないもの、という対立する世界のあいだで[...]橋渡しの役割」(ibid.:p. 12)を演じるものであると考えている。 ヨーロッパのアルプス地方には、仮頭・仮面をつけて、そのように日常生活の自分とは別の「変貌」した人格を演じると考えられる祝祭が今日でも数多く挙行されている。例えば、オーストリアのチロル州東チロル(Osttirol)の村々でおこなわれるムラーラウフェン(Mullerlaufen)の祭り、ドイツのオッフェンブルク(Offenburg)、フレムディンゲン(Fremdingen)、ローテンブルク(Rothenburg)、ロットヴァイル(Rottweil)およびシュヴァルツヴァルト地方(Schwarzwald)でおこなわれるファスナハト(Fasnacht)の祭り、スイスのヴァリス州(Kanton Wallis)のレッチェンタール渓谷(Lötschental)およびルツェルン(Luzern)のファスナハトの祭り、またオーストリアのザルツブルク(Salzburg)の南方のザンクト・ヨハン・イム・ボンガウ(Sankt Johann im Pongau)のペルヒト(Percht)の祭りが、そのように仮頭・仮面を纏い、「匿名性」を持つ「変貌」した人間が演じる存在が登場する祝祭である(谷口&遠藤、1982、1998)。 本稿では、ヨーロッパのアルプス地方でおこなわれる、仮頭・仮面の祝祭の代表的なひとつであるシルヴェスタークロイゼ(Silvesterkläuse/Silvesterchläuse)の祭りを取り上げ、現地調査を通して得られた資料と情報、さらに祭りの挙行者に対しておこなったインタヴューで得られた情報に依拠しながら、仮頭・仮面の研究においてどのような認識論的問題提起が可能かを論じる。そのような展望のものと、まず、現地調査で得られた情報をもとに、シルヴェスタークロイゼの祭りはどのような特徴を持つ祭りかを明らかにする。次に、仮頭・仮面が研究対象となりうる学術的視点から、シルヴェスタークロイゼの祭りはどのように分析でき、さらにその分析にはどのような限界があるかを論じる。最後に、その学問的限界を超越するためには、どのような認識論的問題を提起し、今後、さらにどのような調査をおこなう必要があるかを述べる。 本考察は、2011年~2012年度立教大学学術推進特別重点資金(立教SFR)プロジェクト研究(自由プロジェクト研究)の研究助成金を支給されたグループ研究(研究課題:「ユーラシアにおける汎文化圈的な世界認知の研究-仮頭・仮面に着目して-」、研究代表者:立教大学教授・細井尚子氏)の枠組みでおこなった研究の成果の一部であり、本稿執筆者はこの研究に研究分担者として参加した。この研究の枠組みで、本稿執筆者は単独で事前調査(期間:2011年9月6日(火)~2011年9月14日(水))をおこない、さらに本調査を、本稿執筆者を含む研究会メンバーとともに1度(期間:2011年12月28日(水)~2012年1月4日(水))、さらに単独で1度(期間:2012年12月30日(日)~2013年1月4日(金))おこなった。
Type de document :
Rapport
[Research Report] 立教大学. 2013, pp.61-81
Liste complète des métadonnées

https://hal-univ-paris3.archives-ouvertes.fr/hal-01496424
Contributeur : Fumiya Ishikawa <>
Soumis le : lundi 27 mars 2017 - 15:04:19
Dernière modification le : samedi 14 octobre 2017 - 01:12:44

Identifiants

  • HAL Id : hal-01496424, version 1

Collections

Citation

Fumiya Ishikawa. 「仮頭・仮面の祭り」研究の認識論的枠組みに関する問題提起(序説)―事例調査報告:シルヴェスタークロイゼの祭り―. [Research Report] 立教大学. 2013, pp.61-81. 〈hal-01496424〉

Partager

Métriques

Consultations de la notice

71